2010年9月30日の発売が待たれる,スクウェア・エニックスの新作MMORPG「
FINAL FANTASY XIV rmt」(以下,FFXIV)。近年まれに見るPC版ビッグタイトルだけに,そのPC版公式ベンチマークソフト
「FINAL FANTASY XIV OFFICIAL BENCHMARK」(以下,FFXIVベンチ)の注目度も高い。
そんなFFXIVベンチについて4Gamerでは,
ハードウェア全13構成のベンチマークテスト結果を
「公開記念」としてリリース直後に一度お伝えした。ただ,あれから早1か月半。その間にNVIDIAは,FFXIVベンチ(など)への最適化を謳った
「GeForce Driver 258.96」,AMDも,月例アップデートの最新版
「ATI Catalyst 10.7」といった具合に,新版のグラフィックスドライバをリリースしてきており,スコアには変化が生じている可能性がある。また,先のテスト結果には,
FFXIV推奨GPUの認定を受けた
「GeForce GTX 460」(以下,GTX 460)が含まれていないので,推奨GPUがどういった挙動を見せるのか気になる読者もいることだろう。
そこで今回は,対象となるGPU/グラフィックスカードを22構成にまで増やし,まとめて再テストを行ってみることにした。テストに使うのは,もちろん,
FFXIV公式サイトで示されたリンク先から入手できるバージョンのFFXIVベンチだ。
全22種のGPUでテストを実施
マザーのBIOSによってもスコアが変わる?
テスト環境は表のとおり。
6月17日の記事では,CPUに「Core i7-870/2.93GHz」を用いていたが,今回は「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」に切り替え,それに伴い,組み合わせるマザーボードも,ASUSTeK Computer製の「Intel X58 Express」搭載モデル「Rampage III Extreme」に変更している。
ここで注意してほしいのは,Rampage III ExtremeのBIOSが,最新版の0802でなく,0704になっていること。当初,テストは0802版で始めたのだが,「ATI Radeon HD 5870」のテストにあたって,0704版を使ったときと比べてHighモードのスコアが200ほど下がってしまう現象が見られたため,今回は0704版を用いた次第である。どこまで普遍性のある現象なのかはさておき,BIOSのバージョンによってスコアが変わってしまう可能性は,気に留めておいたほうがいいかもしれない。
※そのまま掲載するとあまりにも巨大になるため,グラフィックスカードの表記を簡略化しました。表の画像をクリックすると,別ウインドウで完全版を表示します
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テストを実行する前に,以下の点をあらかじめお断りしておく。
- CPUの「Intel Turbo Boost Technology」および「Intel Hyper-Threading Technology」は有効化する
- GTX 460はグラフィックスメモリ1GB版と768MB版で仕様が異なるため,両者をGTX 460[1GB]とGTX 460[768GB]と表記し区別する
- MSI製のグラフィックスメモリ1GB版GTX 460カード「N460GTX Cyclone 1GD5/OC」とASUSTeK Computer製の「GeForce GTX 285」カード「ENGTX285 TOP/HTDP/1GD3」は,メーカーレベルでクロックアップがなされた製品であるため,MSI製のGPUカスタマイズユーティリティである「Afterburner」を用いて,動作クロックをリファレンスにまで落とす
- 今回用意した「GeForce 9600 GT」搭載カードは省電力版仕様となる「GF9600GT-E512HW/HD/GE」で,リファレンスよりも動作クロックが低いため,やはりAfterburnerから動作クロックをリファレンス相当にまで高めた状態でもテストを行い「9600 GT(参考)」と書いて区別する
- 文中,グラフ中とも基本的に,「GeForce」「ATI Radeon」を省略したGPU名で表記する
テストにあたって選択したキャラクターは,
6月17日の記事と同じくミコッテ。「Low」と「High」の両モードについて,それぞれ2回実行し,高いほうの数字をスコアとして採用することにした。
念のため,今回も公式サイトにあるスコア指標を下記のとおり引用してみるので,参考にしてもらえれば幸いだ。
- 8000以上:非常に快適
非常に快適に動作すると思われます。お好みの設定でお楽しみください。
- 5500〜7999:とても快適
とても快適な動作が見込めます。描画クオリティを高めに設定しても、とても快適に動作すると思われます。
- 4500〜5499:快適
快適な動作が見込めます。描画クオリティを高めにしても快適に動作すると思われます。
- 3000〜4499:やや快適
標準的な動作が見込めます。余裕が有れば描画クオリティの調整をお勧めいたします。
- 2500〜2999:普通
標準的な動作が見込めます。
- 2000〜2499:やや重い
ゲームプレイは可能ですが、処理負荷によっては動作が重くなりますので、その場合はコンフィグにて調整する事をお勧めいたします。
- 1500〜1999:重い
ゲームプレイは可能ですが、全体的に動作が重く感じられます。コンフィグで調整をした場合でも、あまり改善は見込めません。
- 1500未満:動作困難
動作に必要な性能を満たしていません。
「推奨GPU」GTX 460を軸に全22条件を一斉テスト
〜HD 5800&GTX 200がよい結果を示す傾向に変化なし
というわけで,
グラフ1はLowモードでのをスコア順に並べたものとなる。
ご覧のとおり,最も高いスコアを示したのはHD 5870で,2番手がHD 5850のワン・ツー。
6月の時点と同様に,HD 5800シリーズの優位性が目立つ結果となった。もっとも,そんなHD 5800シリーズを持ってしてもスコアは6000台。スコア5500〜7999は「とても快適」レベルで,「非常に快適」とされる8000以上のスコアに届かなかった。8000超えには,マルチGPU構成や,CPUのさらなるアップグレードなどが必要なのだろう。
では,マルチGPU動作だとどうなるのかだが,HD 5970のスコアが伸び悩み,HD 5850より約16%低いところに沈んでいる点からは,少なくともATI Catalyst 10.7において,ATI CrossFireX(以下,CFX)が正常に機能していないことが見て取れる。一方,GTX 295は,GTX 285比で約5%高いスコアを示しているだけではあるものの,少なくともNVIDIA SLI(以下,SLI)が機能していることだけは間違いない。
さて,ここで押さえておきたいのは,冒頭でも述べたとおり,
GTX 460がFFXIV推奨GPUとなっている点だ。推奨CPUであるCore i7プロセッサの上位モデルを組み合わせたシステム構成のスコアが4600台後半ということも踏まえると,スクウェア・エニックスは,4500前後のスコアを,現時点での推奨環境としてざっくりイメージしているのではなかろうか。
その観点に立ってみると,まず,GTX 275以上のGTX 200シリーズが全体的に余裕を持って高いスコアを示しているのが目を引く。「
FINAL FANTASY XIV rmtのプレイを見据えながら,GTX 200シリーズからGTX 400シリーズへ買い換える」必要性は,少なくとも今のところは感じられない。
一方,GTX 260以下のGPUだと,Lowモードの1280×720ドット解像度でプレイするにあたって,グラフィックス設定で何らかの妥協は必要になりそうだ。
続いて
グラフ2は,Highモードの結果である。Lowモードと同じ順番でGPUを並べてあるので,「全体的にはLowモードと同じ傾向だが,HD 5850やGTX 470,GTX 465でスコアの落ち込みが大きい」ことがと分かるだろう。グラフ画像をクリックすると,スコア順に並べ替えたものを別ウインドウで表示するようにしたので,見やすいほうで見比べてもらえればと思う。
※グラフ画像をクリックすると,スコア順に並び替えたグラフを別ウインドウ表示します
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推奨GPUたるGTX 460のスコアは2500強。「普通」とされる2500〜2999の枠内であり,Lowモードのときのような「快適」レベルにはない。推奨GPU認定は,あくまでもLowモード,1280×720ドット解像度におけるものなので,Highモードに相当する1920×1080ドットの解像度でLowモードと同じくらい快適にプレイしたいという場合,選択肢はかなり限られることになるだろう。
また,HD 4800シリーズだと,「やや重い」クラスにまで落ち込むので,このあたりのGPUでターゲットになるのは,間違いなくLowモードのみということになる。
ところで,HD 5970のスコアがまったく振るわない件だが,これはFFXIVベンチがフルスクリーン動作をサポートしておらず,CFXが有効にならないのが主な理由だ。そこで今回は,
新坂秀敏氏が作成した「FF14ベンチフルスクリーン化ツール」を用いて,参考までにフルスクリーン動作させてみたのだが,ここでのスコアはLowモードで6276,Highモードで6028と,向上が確認できた。つまり,ATI Catalystが今後ウインドウモードをサポートする,あるいは,FFXIVのゲームクライアントがフルスクリーン動作をサポートするようになれば,CFXによるスコアの向上が期待できるようになるというわけだ。
GeForce Driver 258.96でSLI動作のサポートが始まっていることも踏まえるに,マルチGPU構成でFFXIVをプレイしようと思っているなら,スクウェア・エニックスとGPUメーカー両社の動向に注目しておきたいところである。
HD 5850のスコアが秀逸
さて,今回は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,FFXIVベンチ実行中におけるシステム全体の消費電力を計測してみることにした。テストに当たっては,ベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を示した時点をスコアとして採用している。つまり,FFXIVベンチ実行中の最大消費電力値ということになる。
結果は
グラフ3のとおり。
グラフ2と同じく,グラフ画像をクリックすると,別ウインドウで消費電力順に並び替えたものが開くようにしてあるが,HD 5850のスコアは賞賛に値しよう。GTX 460[768MB]を下回っているのは驚異的ですらある。
一方,GTX 480やGTX 295,それにGTX 470は400Wを超えて突出した形となった。HD 5970はCFXが正常に機能していないため,消費電力も低めだが,試しにフルスクリーン化してみると,消費電力値は451Wまで跳ね上がっている。
もう一つ,HD 5700シリーズは,FFXIVベンチに関していうと,スコアが高いうえ,消費電力も低い。HD 4850クラスのGPUを使っていて,なるべくコストをかけずにアップグレードしたいといった場合に,HD 5770はなかなか面白い選択肢といえそうだ。
※グラフ画像をクリックすると,スコア順に並び替えたグラフを別ウインドウ表示します
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マルチGPU動作も含め,さらなる最適化が進む可能性あり
現状は「9月まで待ち」が正解か
以上,8月上旬時点における状況をまとめてみたが,性能で選ぶのであればHD 5870,スコアと消費電力のバランスならHD 5850,コストパフォーマンス重視ならGTX 460かHD 5770といったところだ。HD 5000シリーズが優位という状況そのものには,
6月17日の時点から変化なしである。
もっとも,FINAL FANTASY XIV rmtの発売までは,まだ1か月半ある。NVIDIAとAMDの双方がFFXIVに向けてドライバレベルのチューニングを施してくるのはまず間違いなく,そもそも,FFXIVのゲームエンジンそのものがパフォーマンスを向上させてくることも想像に難くない。
そのため,今回テストを行ったスコアは,GPUメーカーを問わず,今後も伸びる可能性があると見るべきだ。もちろん,製品版の登場が近くなってくれば,マルチGPU動作に関しても状況が明らかになってくるはず。現在まさにβテストへ参加中で,パフォーマンス面で不満を覚えているのであれば,上でその名を挙げたGPUを選ぶべきだが,そうでないなら,9月に入ってからでも決して遅くはなく,それまでの間,何にするか悩んでおくのも,一つの楽しみではなかろうか。
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